経理のアウトソーシングを解説!費用や依頼できる業務、メリット・デメリットを紹介
経理のアウトソーシングについての基本から、費用相場・対応業務・メリット・デメリットまで、初めて検討する方にもわかりやすく解説します。
「経理業務に追われて、本業に集中できない…」
そんな悩みを抱える中小企業やスタートアップ企業が近年増えています。
特に人手不足やコスト削減の課題を抱える企業にとって、経理業務のアウトソーシングは有効な選択肢のひとつです。
自社にとって最適な経理体制を見直すヒントとして、ぜひお役立てください。
目次
経理アウトソーシングとは?
経理アウトソーシングとは、経理業務の一部または全部を外部の専門業者に委託することを指します。
限られた人員で経理を回している企業や、経理に関わる人材を確保することに迷っている場合の選択肢として近年ますます注目を集めています。
経理業務を外部に委託する仕組み
経理アウトソーシングでは、日々の記帳や支払管理だけでなく、給与計算、年末調整、決算処理など、幅広い業務を専門業者に任せることができます。
また、依頼内容に応じて「一部委託」から「完全委託」まで柔軟に対応可能で、メールやクラウド会計ソフトなどを使ってデータのやり取りが行われます。
他にも必要なときだけスポットで依頼できるケースもあるため、自社の状況にあわせて無理のない体制を構築することが可能です。
スタートアップや中小企業でも導入が進む背景
スタートアップや中小企業では、経理専門の担当者を常時確保するのが難しいケースも多く、人件費や教育コストの負担も大きな課題です。
こうした背景から、業務の効率化とコスト削減を同時に実現できるアウトソーシングが注目され、近年では企業規模に関わらず導入が進んでいます。
また、コロナ禍をきっかけにリモートワークが急速に普及したことも、経理アウトソーシングのハードルが下がった理由の1つです。
さらに、クラウド会計ソフトの発達やインターネット回線の高速化により、データのやり取りが以前よりスムーズになり、物理的な距離にとらわれずに外部と連携しやすくなった点も、導入の加速を後押ししています。
経理アウトソーシングで依頼できる主な業務内容
経理アウトソーシングでは、日々のルーティン業務から特定の時期に発生する専門的な決算・税務対応まで、幅広い業務を依頼できます。
ここでは、実際に外部委託されることの多い業務を、種類ごとに整理してご紹介します。
日常的な経理業務(ルーティンワーク系)
ルーティンワーク系の経理の業務には主に下記などが挙げられます。
- 仕入・売上の管理
- 買掛金・売掛金の管理
- 現金・預金の管理
- 経費の仕訳・精算
- 請求書・領収書の発行
こういった日々発生する仕入や売上の管理、経費精算などは、手間がかかるうえにミスが許されない重要な業務です。
この部分をアウトソーシング活用することで、担当者はよりコア業務に専念することができるでしょう。
特にクラウド会計ソフトとの連携も進んでいるジャンルでもあるので、スムーズなデータ共有が可能です。
月次業務(毎月の集計・税金対応)
月次業務としては、主に下記などが挙げられます。
- 月次決算処理
- 減価償却の計算
- 社会保険料の計上・納付
- 源泉所得税の集計・納付
月次業務では、各種帳簿の整理や月次決算締め処理など、より専門性の高い作業が発生します。
この部分をアウトソーシングすると、経理処理ミスのリスクを減らし、社内の負担を軽減できます。
年次業務・決算関連
年次業務・決算関連の具体的な業務内容として、下記などが挙げられます。
- 年次決算・決算整理・決算書作成
- 税務申告(法人税・住民税・消費税など)のための税理士との折衝
- 会社法決算書類作成
年に一度の決算業務や税務申告は、非常に手間と専門知識が求められる領域です。
この時期は他の業務と同時に作業する必要があるなど一般的にどこの企業も多忙となります。
そこで、アウトソーシングによりプロの手を借りることで、季節による業務量のばらつきを抑えるだけでなく、法令遵守や適切な節税対策にもつながります。
給与・賞与関連の計算業務
給与・賞与関連の計算業務に関連する具体的な内容として下記などがあります。
- 給与計算・振込
- 賞与計算・振込
- 社会保険料の算定基礎届 / 月額変更届 ※社会保険労務士業務
- 労働保険の更新 ※社会保険労務士業務
- 年末調整・給与支払報告書の提出 ※税理士業務
給与計算や賞与の支給など、人事・労務と関わる業務もアウトソーシングが可能です。尚、税理士業務、社会保険労務士業務は、税理士事務所、社会保険労務士事務所のみ対応が可能です。
但し、個人情報を取り扱うため、セキュリティ対策が整っている業者を選ぶことが大変重要です。
経理をアウトソーシングする場合の費用相場
経理アウトソーシングを検討する際に、最も気になるのが「どのくらいの費用がかかるのか?」という点ではないでしょうか。
実際の費用は、依頼する業務の範囲や企業の規模、契約形態(定額・スポット)によって大きく異なります。
ここでは、一般的な月額費用の目安と、費用が変動する主な要因について解説します。
月額費用の目安は1〜20万円程度
経理アウトソーシングの月額費用は、小規模な記帳代行だけであれば1〜3万円程度から、給与計算や決算対応なども含めると10〜20万円前後が目安です。
なお、この金額は、従業員数が1〜30名ほどの中小企業を想定した場合の大まかな目安であり、業務依頼内容や処理件数によって変動します。
以下に、従業員規模ごとの一般的な費用イメージをまとめました。
従業員数の目安 | 業務量のイメージ | 月額費用の参考範囲 |
1〜5名 | 記帳代行中心(取引少なめ) | 1万〜3万円 |
6〜15名 | 記帳+給与計算 | 5万〜10万円 |
16〜30名 | 記帳+給与+年末調整+決算対応など | 10万〜20万円 |
30名以上 | 対応範囲・件数によって要見積もり(応相談) | 20万円~(規模による) |
外注費用は一見高く感じるかもしれませんが、人件費やミスによる損失リスクを考慮すれば、コストパフォーマンスに優れた選択となるケースも多いでしょう。
業務範囲と企業規模によって金額が変わる
当然ながら、依頼する業務の内容が多ければ多いほど費用は高くなるほか、取引件数や従業員数なども価格に大きく影響します。
たとえば、仕訳数が多い企業や、給与計算対象の従業員が多い場合は、処理工数が増えるため、月額費用も高くなる傾向にあります。
一方、「最低限の経理だけを委託したい」というニーズにも柔軟に対応できるため、スタートアップにも適している選択肢です。
業務内容によって金額が変わる
経理アウトソーシングでは、依頼する業務の種類によっても費用が大きく変わります。
比較的安価に委託できるものもあれば、専門性が高く手間もかかるため、コストがかかる業務もあります。
業務の種類 | 費用感 | 特徴・理由 |
記帳代行 | 安め | 定型作業が中心で自動化しやすい。 仕訳数で変動あり。 |
給与計算 | 安め | 個人情報管理や制度対応が必要。 正確性が求められる。 |
決算対応・税務申告 | 高め | 会計・税務の知識が必要。 内容が複雑で時間もかかる。 ※申請は税理士業務 |
社会保険関連手続き | 中程度 | 提出書類や法改正対応が求められる分野。 ※社会保険労務士業務 |
法定調書・年末調整 | やや高め | 正確性が強く求められる一方、 件数によって調整可能。 ※税理士業務 |
業務が複雑になればなるほど、担当者のスキルや知識が必要になるため、その分費用も上がる傾向にあります。
一方で、ルーティン作業は安価に抑えやすく、コスパよく外注できるのが特徴です。
尚、税理士業務、社会保険労務士業務は一般の経理アウトソーシング会社では対応できないため、提携する税理士事務所、社会保険労務士事務所があるか確認が必要となります。
スポット契約と定額契約の違いで金額が変わる
アウトソーシングには、「定額契約」と「スポット契約」の2パターンがあります。
- 定額契約:毎月一定の業務を継続して委託するスタイル
- スポット契約:年末調整や決算期のみなど、必要なときだけ依頼するスタイル
スポット契約は一時的なコストで済みますが、都度のやり取りや引き継ぎが必要なため、継続性や効率を重視する場合は定額契約の方が向いていることもあります。
費用だけで判断するのではなく、自社の業務体制や課題にあわせた契約方法の選択が大切です。
経理アウトソーシングのメリット
経理業務をアウトソーシングすることで、単なる業務負担の軽減にとどまらず、コスト削減や業務の質の向上など、さまざまなメリットが得られます。
ここでは、企業にとって特に効果の高い5つのメリットを紹介します。
人件費・採用コストの削減
経理担当者を社内で雇用する場合、人件費に加え、採用・教育・引き継ぎといったコストも発生します。
アウトソーシングを活用すれば、これらの固定費を削減でき、必要な分だけ外注する柔軟な体制を築けます。
「人を増やすより、業務を外に出す」という発想でコスト最適化を目指す企業に適した選択肢です。
専門家による高品質な業務対応
経理のプロに業務を委託することで、ミスやトラブルの発生リスクを大幅に減らすことが可能です。
特に税務や年末調整など専門的な処理では、最新の法改正にも対応できる知識や実務経験が求められます。
自社で対応するのが難しい業務ほど、外部の力を借りることで安心感が増します。
属人化の回避と業務継続性の確保
経理業務を特定の社員に依存していると、急な退職や休職時に業務がストップするリスクがあります。
次の経理担当の確保に求人情報を掲載しても、近年は人材不足によりなかなか理想の人材に巡り会うことは難しいかもしれません。
また、採用が決まったあとも業務に慣れ、滞りなく回るようになるまで時間も掛かることが予想されます。
ですが、アウトソーシングを導入すれば、そのような心配からは解放されるでしょう。
経理のアウトソーシングは将来的な人員の入れ替わりを見据えた“脱・属人化”に大変効果的です。
業務効率化で本業に集中できる
ルーティンワークの部分だけでもアウトソーシングに回してしまえば、経理担当者は日々の仕訳入力や領収書の整理などに追われることなく、経営判断や営業活動といった本業にリソースを集中できるようになります。
特に少人数で運営する企業では、「経理に時間を取られてしまう問題」から解放されることで、事業全体の推進力が上がるという声も多く聞かれます。
突発的なリソース不足にも柔軟に対応可能
繁忙期や決算期など、一時的に業務量が急増するタイミングでは、社内の人手だけで対応しきれないケースもあります。
そんなとき、アウトソーシングを活用すれば、スポット対応で必要なリソースを一時的に補うことが可能です。
ただし、どの企業も同じ時期に依頼が集中しやすいため、直前での相談は対応が難しい場合もあります。
そのため、繁忙期を見据えてあらかじめ計画を立て、早めに相談・準備しておくことが、スムーズな外注のポイントです。
経理アウトソーシングのデメリット
多くのメリットがある経理アウトソーシングですが、すべての企業にとって万能な手段とは限りません。
導入前に、想定されるデメリットもしっかり理解しておくことが大切です。
ここでは、外部委託でよく挙げられる3つの注意点について紹介します。
社内で即時対応できないことがある
アウトソーシングは便利な反面、「すぐに誰かに聞ける・その場で対応できる」といった柔軟さは失われる可能性があります。
たとえば急な支払いミスの確認や、経営会議で急に資料が必要になったときなど、リアルタイムの対応が難しい場合が想定されます。
そのため、アウトソーシング先との情報共有や連絡のタイミングをしっかりルール化しておくことが重要です。
情報漏えいリスクへの配慮が必要
経理業務では、取引先情報・給与データ・社内の資金状況など、極めて機密性の高い情報を扱います。
そのため、外部とデータをやり取りする際のセキュリティ体制は、必ず事前にチェックしておく必要があります。
情報管理に対する取り組みを謳っている業者であれば信頼性が高いといえるでしょう。
安心して任せられるパートナーかどうか、コストだけでなくセキュリティ面でもしっかり比較検討することが重要です。
自社のノウハウを蓄積しにくい
経理を完全に外部に任せきりにすると、社内に実務知識や判断力が蓄積されにくくなるという課題もあります。
将来的に内製化を検討している企業や、スタッフの育成を重視したい場合には、「一部は社内で運用」「将来的に引き継ぐ前提で委託する」といった戦略的な導入がおすすめです。
また、最近では業務の流れや処理手順をドキュメント化して共有してくれるアウトソーシング業者も存在します。
こうした資料を活用すれば、社内にもプロのノウハウを蓄積することが可能です。
「内製化支援」や「DX推進」を掲げているアウトソーサーなど、単なる外注先ではなく、「一緒に成長できるパートナー」を選ぶと良いでしょう。
アウトソーシングを依頼する際のポイント
経理アウトソーシングを成功させるためには、「どこに依頼するか」だけでなく「どう依頼するか」も非常に重要です。
費用や対応範囲だけに注目しがちですが、業務体制やセキュリティ、将来的な内製化への対応力なども含めて、総合的に判断する必要があります。
ここでは、実際に依頼する際に押さえておきたいポイントを解説します。
業務範囲を明確にした上で業者を選定
まず重要なのは、自社がアウトソーシングしたい業務の範囲を明確にすることです。
必要な資料を全て整理した上で、記帳代行だけを依頼したいのか、経理全般のアウトソーシングを依頼したいのか。また、給与計算や決算、税務申告まで含めたいのかによって、選ぶべき業者や契約形態が大きく変わります。
「できるだけ安くやってほしい」や「経理は全部任せたい」など、目的をはっきりさせておくことで、業者とのミスマッチを防ぐことができます。
セキュリティ体制・実績の確認
経理業務は個人情報・社内情報の宝庫です。
情報漏えいリスクを最小限に抑えるために、業者のセキュリティ体制を必ず確認しましょう。
特に以下のような取り組みがされているかがポイントです。
- Pマーク(プライバシーマーク)やISMS(情報セキュリティマネジメント)の取得
- 通信やデータの暗号化、ファイルへのパスワード設定などの基本対策
- 業務開始前にNDA(秘密保持契約)を締結する体制がある
また、過去の取引実績や対応企業の規模感などもチェックし、信頼できるパートナーかを見極めましょう。
契約内容のチェック(費用・納期・対応範囲)
契約時は、費用だけでなく、対応範囲や納期、対応スピードの確認も重要です。
- どこまでが基本料金に含まれているのか
- スポット業務は追加費用がかかるのか
- 連絡方法や返信スピードに関するルールがあるか
など、「想定外の追加料金」や「連絡がなかなかつかない」といったトラブルを避けるためにも、細かいポイントも契約前に確認しておきましょう。
担当者とのコミュニケーション体制の確認
経理アウトソーシングは、一度依頼したら終わりではなく、日常的なやりとりが発生する業務です。
そのため、「誰が担当者になるのか」「質問したときの返答スピード」「相談しやすさ」など、コミュニケーション体制も選定基準として大切です。
また、業務の流れを資料で共有してくれる業者や、内製化支援に前向きな姿勢のある業者であれば、将来的な社内展開にもつながるノウハウの蓄積が可能です。
【まとめ】経理のアウトソーシングで経営を効率化!
経理業務をアウトソーシングすることで、人件費の最適化や業務の属人化防止、専門性の高い対応など、さまざまなメリットを得ることができます。
一方で、デメリットやリスクも存在するため、「自社に合った範囲で、信頼できるパートナーを選ぶ」ことが、成功のカギとなります。
まずは気になる業者に相談してみたり、資料を取り寄せて比較してみたりと、できるところから一歩ずつ情報収集を始めてみましょう。
経理の効率化が進めば、会社全体の成長スピードも加速するはずです。